キャリアの前提と年齢ごとのルール
転職者の方とお話しをしていると、具体的な職業についてはもちろんですが、もっと根本的な「キャリアとどのように向き合っていくべきなのか」という質問もよく受けます。
そのときには、「キャリアは厳しくもあるが、楽しくもあるもの」だと答えています。
厳しさというのは、言い換えるとルールです。例えば、私が今からプロ棋士になりたくても、奨励会への入会条件である19歳以下を満たさないため、残念ながらなれません。
楽しさがある、というのは自由度が高いということです。今の会社や職業から別の会社や職業に移るのは、(上記のルールが許すのであれば)私の自由だと考えています。例えば、医学部に行く必要があるため大変困難ですが、今から私が医者になろうと思えばなれる可能性はありますし、農家になって自給自足の生活を送りたければそれも可能だと思います。つまり、キャリアはある程度は自分の意思で歩むことができます。
今回はこのように厳しくも楽しくもあるキャリアのルールと歩み方についてお伝えします。
「キャリア」に複雑性が発現
「終身雇用が崩れ、自分自身でキャリアを考えないといけない時代になってきた」という話は、おそらく多くの方が飽きるほどお聞きになっていると思います。
この話の大切な意味合いは、キャリアが多様化し複雑化したことで、キャリアの正解がなくなったというところにあると考えています。一昔前であればキャリアは会社が示してくれました。そのため、目の前の仕事に取り組んでいけば社内で昇進し、それが正解とされました。それができたのは、社会のスピードが比較的緩やかで事業自体の勝ち筋が長期的に見通せたため、社員に何を求めればよいか会社がわかっていたからです。しかし、目まぐるしく社会が変化する現在では、企業にも素早い変化が求められ、キャリアも多様化したため、会社も社員に正解を示すことが難しくなりました。そのため、個々人が自身でキャリアについて考えなければならなくなりました。
しかしその一方で、自分で生き方を選択しやすい社会になったというようにも捉えられると思います。私が支援した方の例であれば、金融の法人営業職から、金融のマーケティングリサーチ営業職へ転職し、そこから金融のマーケティングコンサルタントへとキャリアを進めた方もいらっしゃいます。
キャリアと向き合わなければならないのであれば、少しでも楽しんでキャリアを歩んでいただきたいと心から思っています。
楽しんで歩むためには、転職のルールを把握することが大切です。その時々で必要なことを年齢別に整理していきます。
年齢別の転職のルールと歩み方
転職のルールをお伝えするにあたり、「キャリアは広げるものではなく、絞り込んでいくものである」ということを念頭においていただければ幸いです。また、この絞り込みは、自分の意思ですることもできますが、そうでない場合には、時間とともに絞り込まれていってしまうということにもご注意が必要です。
なお、SIer(SE)の方は、下記で紹介するよりも少し時間軸が遅くなりますので、以下の記事も併せてご確認ください。
20代の転職ルールと歩み方
20代は現職と同じ業界内もしくは職種内で転職ができます。例えば金融の営業の方をAさんとすると、Aさんは金融業界内の他職種か、他業界の営業職への転職ができます。また、新卒3年以内(~26歳程度)であれば、ポテンシャル(スキルや知識ではなく、マインドやコミュニケーション力)での転職もしやすいため、業界職種問わず、比較的大きなキャリアチェンジができる場合もあります。
30代になると大きなキャリアチェンジはとても難しくなりますので、20代のうちに今後の大きな方向性を定めて、その環境にいることが大切です。
なお、大きな方向性を定める上では、以下の記事を参考にしていただければ幸いです。
(SEのキャリア戦略に関するの記事ではありますが、他の業界・職種の方も大きくは変わりません)。
30代の転職ルールと歩み方
30代は「何をやってきたか」によって転職をします。つまり、同じ職種内での転職がセオリーです。
例えば、先ほどのAさんが、金融のITコンサルに転職したうえで、30代で再度転職をしようとすると、他業界を専門としたITコンサル職への転職はしやすいですが、金融業界内の他職種への転職は難しくなる傾向にあります。また、同じ営業職への転職であっても、有形商材の個人営業から無形商材の法人営業への転職などは難しくなってきます。
次の40代での転職では、30代での実績をもとに更に専門性を深めていくことになりますので、30代では自分が勝負できる領域でいかに実績を作っていくかが大切です。
40代以上の転職ルールと歩み方
40代以上で転職をする場合は「どの領域でどんな成果が出せるか(出してきたか)」が見られます。大きな即戦力であることを期待されますので、ほとんどの場合は、現職と同じ領域内での転職になります。さきほどのAさん(金融・営業)が40代まで同じ会社で勤め、中小企業のリスクマネジメント関連の保険領域で活躍しているとすれば、転職する場合、中小企業のリスクマネジメント領域での実績が即活かせるポジションへの転職になります。
40代以上はキャリアの集大成ともいえると思います。その領域で自分の実力を磨いていくとともに、人材育成や経営など会社の根幹に携わっていく機会が増えていきます。
キャリアにおけるアプローチショット
ゴルフにアプローチショットというものがあります。アプローチショットとは、カップを直接狙うのではなく、次の一打でホールが狙えるように、ボールをカップに寄せるショットです。
キャリアにおいても、一度の転職で自分のなりたい姿になれるとは限りません。ですが、アプローチショットのように寄せることで、次の転職でなりたい姿になるチャンスがあります。
例えば、先ほどのAさんがベンチャーの経営企画になりたい、と思ったとするとします。この場合、ベンチャーの経験も企画職の経験もないので、一回の転職でそのポジションに就くのは難しいです。しかし、まず現職の職種と同じ「ベンチャーの営業」に転職をし、そこで営業企画になることができれば、ベンチャーの経営企画へ大きく近づくことができます。
今回は、キャリアのルールと歩み方について書かせていただきました。将来像を描き、現在地を把握した上で、必要経験やスキルを明らかにし進んで行くことにより、なりたい姿に近づくことができます。この記事の中で「キャリアは厳しくもあるが、楽しくもあるもの」ということを少しでも感じていただけていましたら嬉しい限りです。また、この機会がキャリア形成の一助となれば幸いです。