SIer出身者のキャリア戦略基礎

2021.10.03 キャリアのルールと考え方

今回はSIer・SEのキャリア戦略(キャリアプランニング)について書いていきます。
今までの経験やスキルを活かしながら、より良いキャリアへと向かう一助になるかと思いますので、ぜひご一読ください。

以前、SIer・SEのキャリアアップ・転職先について書きましたが、
「より基本的で、ベースとなる考え方を書いて欲しい。」
というご要望を頂きましたので、お伝えさせていただきます。

具体的な転職先の検討はこちらをご参照ください。

また、この記事ではSIerについて書いていきますが、他の職種の例えば営業職や企画職なども基本的には同じですので、参考にしていただける内容かと思います。

キャリア戦略の重要性

SIerのキャリア戦略のマイルストーンは30代半ば

まず、SIerと他の職種のキャリア戦略における違いを確認していきます。
結論から言うと、それは「時間軸」です。
一般的な職種は3年ほどでスキル・経験を認められますので、
その3年目がひとつの大きな転換点、さらにその倍の6年目あたりで、
キャリアの方向性はほぼ決まります。

その一方でSIerは、導入~テストまでを一通り経験し、ITに対する理解も深い人材として
転職市場で認められるまでに、5年程度必要です。つまり、5年目がひとつの大きな転換点になります。
そして、10年目あたり(30代半ば)で、キャリアの方向性が決まるもっとも重要な転換点を迎えます。
そして40代前半では、5年後10年後にはどんな立場で何をやっているのかを明確にしていく必要があります。

もちろんこれ以外にも違いはありますが、キャリア戦略を考えるうえではこれが一番の違いです。

ここからは、30代半ば(他の職種は30歳前後と読み替えてください)で迎える大きな意思決定に向け、
どのように考え、どのようなキャリアを積んでいけば良いかについて説明していきます。

登るべき山の候補を特定して登り方を考え、アタリをつける

キャリア戦略といっても抽象的で考えづらいので、まずは30代半ばにおけるキャリアのゴールを明確にすることが重要です。

これについては様々な考え方はあると思いますが、「30代半ばで迎える意思決定への準備を完了すること」がゴールであると言えます。
言い換えると、「登るべき山の候補を特定して登り方を考え、アタリをつける。」です。もしくは、「大まかな方向性を描き、アタックする」と言ってもいいかもしれません。

登るべき山の候補を特定して登り方を考え、アタリをつける

30代に迎える重要な意思決定とは

この、「30代半ばでの意思決定」についてまずは説明をします。キャリアにおいて、30代半ば(32~36歳)は今後40年働く領域が決まる時期です。

SIerの転職市場においてもこの時期を超えると未経験者を受け入れることは少なく、経験やスキル、実績が求められるようになります。
また、ライフプランとの兼ね合いも出てくる年齢でもあり、今後どのようなキャリアにするかを決めていく必要性が出てきます。

タイムリミットが来れば、決める決めないに関わらず、登山が始まるのです。そしてその山から他の山に移ることは難しくなってきます。
SIerで働くSEにとって30代半ばは今後働いていく分野を見定める、大切な意思決定を迎える時期なのです。

キャリア戦略の立て方

価値観に合う領域の特定とキャリアとの紐づけが肝要

この重要な意思決定は、実際には無意識のうちにされてしまうことが多くあります。多くの人は、日々の業務に打ち込んでいる間に、気が付いたら進む先が確定してしまいます。

もちろん会社のため、お客さんのために目の前の仕事に打ち込むこと自体には非常に価値がありますし、私もそのような方を好きですし支援したいと思います。
だからこそ、そんな方にこそ、せめて1年に1回、自分の登りたい山、おおきなキャリアの方向性について、自分のために時間を使って考えてほしいと思っています。

その時間で、価値観に合う領域の特定(自分がやりたいことは何なのか)、キャリアとの紐づけ(機会を掴めるのか)を考えてください。
以降では、キャリア形成に向けた第一歩の準備について、この2つの観点から説明していきます。

キャリア戦略の立て方概要

① 価値観に合う領域の特定

まずは、自分の価値観に合う領域の特定を行います。つまり、今後30年間やっていきたいと思う領域を特定します。
20代では、

「もっと専門的な技術を身に着けたい」
「様々な領域に触れながら、知的な面白さを感じたい」

といった曖昧な方向性でも問題ありません。

一方で、30代半ばを迎える時には、
「ITエキスパートとして通信領域の第一線に立ち続けたい」
「IT最上流を担うCIOアドバイザリーになりたい」

と仕事に紐づいた形でのキャリア意向に持っていくのが理想的です。

しかし、このテーマについて考えようとすると、選択肢の広さもあり、結局まとまらないということも多くあります。
今回は、きちんと検討を進めるための考え方のコツを紹介していきます。

「ピンポイントに絞りすぎない」こと
一つ目は「ピンポイントに絞りすぎない」こと、つまり、大きな方向性に留める、ということを意識することです。
考えているのに明確な結論が出ないという場合、多くは情報や経験が足りていないことが原因です。この状況で、ピンポイントに特定しようとすると、大きく誤った結論に着地したり、結局考えが進まなかったりする場合が多いです。

この罠に陥らないように、「究極的にはやってみないとわからない」という大前提に立ち、ある程度の曖昧さは許容し、大きな方向性で考えることが大切です。

「ちょっと曖昧だが、ここまでは正しそうだ」というアタリをつけ、より正確な自分の意向を知るべく、一度飛び込んでみるという考え方が必要となります。30代半ばまでに、絞り込んでいくという姿勢で検討することによって、着実に考えを進めることができます。

例えば、エージェントである私が、金融系の経験がないSEの方から
「コンサルファームの金融チームで新規事業立案がやりたい」
と言われたら、その仕事の具体的なイメージを聞いた上で、改めて将来像を一緒に描くようにしています。
もちろん、自分の意見を持つことは良いことですが、経験がない中でのピンポイントさは、妄想に近くなりやすいのです。

「広さを許容する」こと
二つ目は「広さを許容する」ことです。こちらは1つ目で上げた途中経過として曖昧さとは異なり、「最終的な着地点が広いものでもOKとする」ということです。つまり、領域を絞った専門性がなければだめ、というわけではないということを意識してほしいということです。

具体例でいえば、一口にITコンサルといっても、

「IT会計パッケージの導入に強くなっていきたい」という人もいれば
「デジタルを使って幅広くビジネス推進に携わりたい」という人もいます。

やりたいことを考えていくと、どうしても、最初は幅広く、それを狭めていって専門性を持つと考えられがちです。
特にITに関わっている方ですと、その傾向が強いように思います。
しかし実際には、興味の広い人は広いままであり、狭い人は絞られていく、ということを理解することが大切です。
例えば、読書が好きな人でも、大人になっていくにつれ、実用書しか読まなくなる人もいれば、小説も含めて本なら何でも読む人がいるように、その人によって広さは様々です。中にはハリー・ポッターだけを熱狂的に好きになるという人もいます。

ですので、自分のやりたい領域は、広くても狭くても問題は何もなく、絞りすぎることなく考えてください。

「複数の選択肢もアリと認識する」こと
三つ目は、「複数の選択肢もアリと認識する」ことです。
方向が一つに定まらない際は、進みたい方向に複数の選択肢を持ってもよいでしょう。
例えば「CIO」か「AI等の先端テクノロジー」の方向かで迷うため決められないという場合です。この場合においては、現在のキャリアだと技術領域でしか業務を経験したことがなければ、次のキャリアとしてビジネス観点を身に着けられるものを選ぶのも良いでしょう。
このように、両方の方向性を満たすアプローチショットとなる環境に身を置くといった形で進めることも出来ます。
ただし、遠すぎる選択肢は同時には持てないので注意が必要です。

②キャリアとの紐づけ(準備)

キャリアへの紐づけは難易度が高いが重要

価値観に合う領域の特定をした後には、キャリアとの紐づけ、つまり冷静に機会をつかむための準備をしていきましょう。
自分のやりたい領域の特定を行なった上で、そこに移れるようにしておく必要があります。
例えば、30歳でなんとなくITコンサルか上流SIerが向いていると考えている人がいるとします。この方は、次の転職ではコンサルファームに行かなければいけません。

もし上流SIerに行った場合、35歳でITコンサルがやりたいとなった場合でも、働き方や能力、経歴などの様々な点から転職することはなかなかに難しくなります。
一方、ITコンサルから上流SIerに移ることは、能力さえあれば決してハードルは高くありません。

このように、自分のやりたいことを明確にする一方で、柔軟に移れるようにしておく必要があります。
具体的には、上述した「価値観の特定」に加えて、30代半ばまでに「どのようなスキル」を備え、「どのような経験」が必要なのか、考え、身に着け、経験を積んでいくことが必要なのです。

今回は、SIer・SEの方にフォーカスしてキャリア戦略をお話させていただきました。この記事を通してSIer・SEの方は勿論のこと、その他の方々も含めてキャリアの全体像を把握した上で、自身が登りたいと思える山(なりたい姿)を見つけて進んでいけるきっかけとなれば嬉しい限りです。
この機会がキャリア形成の一助となれば幸いです。

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